HCH[7361]株主のリサ・パートナーズとは?上場後はM&Aの動向に注目【スタートアップCFO渡邊祐也の視点】

上場企業の企業分析

IT人材の派遣事業を手掛ける株式会社ヒューマンクリエイションホールディングス(HCH)が東証マザーズに上場します。同社は純粋持株会社であり、事業子会社は、(株)ブレーンナレッジシステム、(株)シー・エル・エス、(株)アセットコンサルティングフォース、(株)セイリングの4社となっています。

プライベートエクイティ投資会社のリサ・パートナーズのファンドが株式の9割以上を保有しており、今回上場時にその全株を売出で放出する珍しいケースです(ただし一部は、(株)リサ・パートナーズ自身が親引けで取得)。

ここから、株主であるリサ・パートナーズの概要、HCHの業績推移や注目ポイントについて解説していきます。

本文の一部と若干の加筆を除き、ほとんどの内容はUNCOVER TRUTH 取締役CFO渡邊祐也さんのnoteから転載許諾を受けて転載・制作をしています。渡邊祐也さんのご紹介は目次より参照ください。

サマリー
・リサ・パートナーズはNEC系のPEファンド会社。持株を全株売出
・M&Aによる成長
・今後、KPI(保有人数・契約単価)や、のれん残高に注目

数字で見るHCH

数字で見るHCH

HCHの設立は2016年となっておりますが、事実上の創業時期は1974年で、かなり歴史のある会社です。創業当時は、金融機関向けのハードウェア販売・保守などを手掛けており、旧社名は(株)バンキング・システムズとなっていました(株主であるBSHの由来は、Banking Systems Holdingsかもしれません)。

リサ・パートナーズとは

リサ・パートナーズとは

リサ・パートナーズとは、NECキャピタルソリューション株式会社の連結子会社で投資銀行業務を手掛けています。NECキャピタルソリューションの有価証券報告書によると、同社の99.9%出資子会社であり、リサ・コーポレート・ソリューション・ファンド3号の記載もあります。

HCHの関係会社

リサ・パートナーズが、HCHに資本参加したのは2015年であり、同ファンドからは、HCHを含めて7社投資しています。

リサ・パートナーズの運用ファンド

1番目の電子書籍(漫画)販売は、2017年にIPOした株式会社ビーグリー(東1・3981)であり、上場承認時は76%の株主でした(下記は、ビーグリー上場時の有価証券届出書より)。

ビーグリーとリサ・パートナーズ

売出について

株式会社BSHは、保有するHCH株の全株(1,569,400株)を売り出します。PEファンド案件で持株を上場時に全株売り出すのは珍しいケースではないでしょうか。一方、全株売却しておけば、初値後の売り圧力にはならないため、好意的に捉えられる面もあります。
なお、事業シナジーの創出を目的とした関係強化のため、売出株式のうち上限284,000株を株式会社リサ・パートナーズ本体が親引けにより取得・保有することになっています。

HCHの売出

業績推移

売上高は順調に推移。経常利益も2021年9月期予想で経常利益が5億円を突破、経常利益率も10%となる予想です。

HCHの業績

システムソリューションサービス事業では、技術者保有人数、平均契約単価をKPIとして開示しています。

HCHの保有人数推移と平均契約単価推移

ビジネスモデルは、SIerやメーカーの下請け開発会社として案件を受託し、顧客先常駐を前提としてエンジニア派遣サービスを提供するものとなっております。売上成長のためには、保有人数増加と契約単価向上の両方を実現する必要があり、特に人数増加が課題になると想定されます。ポイントは、

・エンジニア(またはエンジニア候補)の継続的な採用
・採用したエンジニアの教育体制
・PM/PLクラスの人数増加(=契約単価向上に影響)

契約単価については、Branding Engineerの目論見書分析で記載した際に事例として出したGeechs(ギークス)で人月単価70万円前後でしたので、やや低い水準となっております(よろしければ、下記note「3 急成長した売上の背景」をご参照ください)。

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M&Aを活用した成長

「M&Aを活用したインオーガニック成長」と謳い、中小IT人材系企業の買収等による事業拡大を狙ってます。企業沿革からも、過去に買収を繰り返した経緯がわかります。

M&Aを活用した成長

一方、買収によるのれん残高が膨らんできており、仮に買収事業の収益性が悪化した場合、今後買収する企業のPMI(Post Merger Acquisition)がうまくいかない場合などは、PLに与える影響は少なくないため、注意が必要です。のれんの償却期間は10年となっており、ルール上は20年以内ではあるものの、IT企業の買収案件としては短くない方だと思います。

HCHののれん

「のれん償却期間」

子会社株式の取得をした場合、当該株式の取得原価を子会社の識別可能な資産負債に対し時価を基礎として配分し、取得原価が配分金額の純額を超過すればのれんが計上され、下回れば負ののれんが計上されます(企業結合に関する会計基準30項、31項)。 のれんは、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって定額法等の方法により規則的な償却を、他方負ののれんは、発生事業年度に利益として計上することになります(同基準32、33項)。

EY 企業会計ナビ「買収子会社に関する留意点」

今後のM&Aについて、HCHの本業である技術者派遣・人材教育・および周辺事業であれば、複数のPMI経験もあるため、のれん計上に対してリスクになるとは考えづらいものの、業績拡大のための新規事業として得意領域以外で大きめの買収を行った場合などは、注視する必要がありそうです。

デット調達

M&Aに必要な資金を社債発行や借入により銀行から調達しています。調達コストである借入金利(社債であれば利率)がかなり低水準であり、未上場企業としてはデット調達能力は高いと見ています(リサ・パートナーズの子会社という信用度で調達コストを下げている可能性もあります)。
上場後は、株式交換によるM&Aも可能になりますが、銀行との関係性は良好であると鑑みて、低コストでのデット調達により適度な財務レバレッジを維持していくことになりそうです。

初値・株価動向への所感

リサ・パートナーズによる売出数が多く、引受先も親引け以外は個人投資家中心になると見られるため、初値後の上昇は限定的だと思われます。さらに、IT人材紹介系の類似会社(利益水準が低いBエンジニアを除く)と、おおよそPERは20~30倍であり、HCHの当期純利益予想が309百万円、PER30倍としても時価総額90億円強であり、既に公開価格でその水準まで来ています。初値後の値動きで、ボラティリティや出来高が減らなければ注目してよいかもしれません。

渡邊 祐也さんの紹介

UNCOVER TRUTH 取締役CFO 新卒はみずほ証券→VC→上場会社取締役→スタートアップ/目論見書分析note書いてます(Twitterプロフィールより引用)

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