モバイルオンラインゲームの企画・開発を手掛けるcoly(4175)になります。配信タイトルすべて自社オリジナル、「スタンドマイヒーロース」(2016年9月~)「魔法使いの約束」(2019年11月~)などが代表作です。代表者2名が双子の女性役員という珍しい役員構成でもあります。
特筆すべきは、業績数字です。
上場申請期である今期2021年1月期の業績予想が、売上高は前年比1.8倍、経常利益は前年比7.3倍と急成長しています。
本記事では、急成長の背景と今後の業績動向について、aiming(3911)との比較を交えながら解説していきます。
本文の一部と若干の加筆を除き、ほとんどの内容はUNCOVER TRUTH 取締役CFO渡邊祐也さんのnoteから転載許諾を受けて転載・制作をしています。渡邊祐也さんのご紹介は目次より参照ください。
>>>こちらもオススメ(【5分で読める企業分析】colyの有価証券報告書を参考に独自見解)
サマリー
・「魔法使いの約束」がヒットして、業績絶好調
・ 経営上の重要な指標で営業利益とするのは、経営に自信あり?
・ 株主は創業者3名のみ(ストックオプションなし)
・ 上場時のaimingと比較。見通しは?
数字で見るcoly

設立からたった7年。外部資金調達を一切せずに、自己資金のみでここまで急成長できた企業はなかなか無いと思われます。B/Sを見たところ、借入金もほとんどありませんでした。
・今期(2021年1月期)、売上・利益ともに急成長
・株主が役員のみ。ストックオプションなし

事業系統図の特徴としては、マーチャンダイジングを非常にうまく展開していることです。グッズ販売において、缶バッチをランダム梱包により販売することで、ユーザーの購買意欲を高めるなどの施策を展開しています。
当社が販売するグッズのうち、缶バッジ等の主力商品についてはランダム梱包(開封するまでどのキャラクターが入手できるかわからない梱包方法)を基本としているため、ユーザーのお気に入りのキャラクターグッズが手に入った際の思いがけない満足感を得て頂ける仕組みとなっております。
新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)より

ゲームの特徴は、明確に女性向けにターゲットを絞っているところです。対象となるのは、「夢女子」「腐女子」双方とのこと。国内スマホゲーム市場が前年比100.2%と横ばいで推移する中、国内の女性向けゲーム市場は2016年より急激に拡大しており、市場規模は2020年で約800億円となります。
colyは、女性向け市場の成長とともに、売上高を順調に拡大させてきました。概算での市場シェアは、約6%(FY2021ゲーム売上51億円/市場規模800億円)となっており、シェア拡大が期待されます。
国内スマホゲーム市場は、2021年には前年比100.2%の1兆2,720億円まで拡大が見込まれ、今後も底堅く推移するとみております。これに対し、国内女性向けゲーム市場は2016年より急激に拡大し、2019年の市場規模は約700億円と想定しております。一方、2020年に入って複数の大型ヒット作が登場したことで、(中略)、市場規模は約800億円を超えて成長するものと予想しております。
新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)より
また、スタートアップ企業が掲げる「重要な指標」は、たいてい売上高、売上総利益、顧客数、LTVなどのケースが多いですが、colyはシンプルに「売上高及び営業利益」を重視しています。これは、販管費まで含めた業績数字のマネジメントが出来ており、利益率向上・利益成長に自信がある裏付けであると見ています。

ゲームタイトル別売上推移
ゲームタイトル別売上になります。魔女使いの約束が前年比18倍以上。凄まじい伸び方を示しています。2021年1月期は予想ではありますが、1月までの数字なのでほぼ実績数値と見てよいです。

2021年1月期4Qは、四半期売上が20億円を超えてくる見込みであり、このトレンドなら、来期(2022年1月期)の業績予想は売上高100億円を超えてくる可能性もあります。
aiming上場時との比較
売上高および経常利益について、同じオンラインゲーム企業であるaiming[3911]と比較します。
・colyは、黒字を出し続けながら急成長を実現
・aimingは、営業赤字が続いていたが、上場申請期に大幅黒字化
coly(5ヵ年売上高・経常利益)
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aiming(上場申請期前後の売上高・経常利益)
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aimingは、上場前からフィリピンや台湾に子会社を設立するなど海外展開を積極化しており、「剣と魔法のログレス」が大ヒットしたことで、売上高が上場申請期に向けて急拡大しました。
その後、課金売上の低迷などがあり、翌期から一転赤字決算となります。
一方、colyについては、堅実的な黒字経営であること。海外展開については、(海外子会社がないため)自社拠点ではなくパブリッシングで展開していると思われ固定費を抑制しながら市場拡大を目指していること。
マーチャンダイジング戦略が奏功し、ユーザーの囲い込み、LTV向上が見込めることなどから、来期以降も順調に成長するものと筆者は予測しています。
今後は、今回調達した資金による積極的な人材投資による事業拡大、海外展開、これらの事業投資の成果が、さらなる成長を実現できるかどうかの注目点になると思われます。
その他トピックス
インセンティブプラン
ストックオプションを従業員向けに全く発行していない代わりに、インセンティブプランは年2回の賞与となっております。ただし、1回あたりの金額は全従業員(200名強)で4,000万円程度(1人あたり概算20万円)となっており、それほど多い金額ではありません。その代わり、働きがいや福利厚生面で従業員満足度を高めていると想像しています。

役員報酬
役員報酬は、取締役3名で年間7,200万円(1人あたり2,400万円)となり、スタートアップとしては高めの報酬ですが、年間利益を考慮して妥当な金額です。

初値・株価動向への所感
マーケット環境が冷え込まない限り、初値は値段が付きづらい状況になると思われます。ヒット作の高い売上成長、オンラインゲームはコロナ禍での巣ごもり需要があると見られることなどから、上場直後の乱高下はありそうですが、底堅い動きになりそうです。そして、翌期(2022年1月期)の業績予想にも注目したいところです。
最後までお読み頂きまして有難うございました!
渡邊 祐也さんの紹介

UNCOVER TRUTH 取締役CFO 新卒はみずほ証券→VC→上場会社取締役→スタートアップ/目論見書分析note書いてます(Twitterプロフィールより引用)
「資金調達のリアル」をIPOした企業を中心に多角的な分析をTwitterとnoteでつぶやいてます。ご興味ある方はぜひフォローしてみてください!

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