【5分で読める企業分析】ヤプリの有価証券報告書を参考に独自見解

5分で読める企業分析

株式会社ヤプリとは

アプリ開発技術がなくともノーコード(プログラミング不要)でアプリを開発、運用ができるクラウド型のアプリ運営プラットフォームの企画・開発・販売。

会社概要

会社名:(株)ヤプリ
代表者名:庵原 保文
創業年:2013年4月
上場年:2020年12月
上場コード:4168
発行市場:マザーズ
業種分類:情報・通信
会社URL:https://yappli.co.jp/
投資家情報:https://yappli.co.jp/ir/
採用サイト:https://yappli.co.jp/recruit/

ビジネスモデル

ヤプリが顧客に提供している価値
ヤプリが顧客に提供している価値

顧客に提供している価値を一言で表すと、「プログラミング技術の一般開放」の提供です。
・プログラミングなしでアプリが制作できるプラットフォームを展開
・大規模な開発のための要件定義やエンジニア稼働が最小化できる
・ITエンジニアの人件費が高騰(人材不足)を解消できる

【ビジネス構造】

事業はSaaSサービスで、月額でプラットフォームの利用ができるというもの。プログラミング技術がなくてもアプリを制作できるもので、アプリ開発・運用のコストの代替サービス。

競合になるのが「受託会社」や「テンプレートリリース会社」。受託会社よりも安価で、テンプレートよりも多くの柔軟性をもっているのが独自ポジションとのこと。

また、独特なのが「スマートフォンアプリに特化」している点。

総務省『令和2年 情報通信白書のポイント』から画像引用
総務省『令和2年 情報通信白書のポイント』から画像引用
世帯におけるスマートフォンの保有割合(総務省『令和2年 情報通信白書のポイント』から独自に制作)
世帯におけるスマートフォンの保有割合(総務省『令和2年 情報通信白書のポイント』から独自に制作)

総務省から出されている『令和2年 情報通信白書のポイント』によると、世帯におけるスマートフォンの保有割合は83.4%になっています。

約10年スパンでみた時に顕著な伸び方になっています。この伸び方は、付随するスマートフォンアプリの需要も同じはずです。ヤプリが顧客に提供している価値を一言で表すと「プログラミング技術の一般開放」であり、エンジニア(の人件費)の代替なのでニーズは高まっていくと考えられる。

スマートフォンアプリをノーコードで作れるという独特な領域に特化しているのが強みである一方、スマホがなくなったら「領域が消滅する」ので課題にもなります。

【顧客開拓】

顧客の開拓方法は「成長可能性に関する説明資料」でも書かれている通り、BtoBサービスの顧客開拓方法そのままで3ステップ。

①マーケティングによるリード獲得
②リードのナーチャリング
③ホットリードへのセールス

そもそも「リード」がないとステップ②にすすめないので、いかに効率的効果的にリードを獲得がポイントになる。

庵原 保文 代表のキャリアがもともとマーケティング畑であり、効率的効果的な施策をしていく思想・組織文化はありそう。

加えて、SaaSモデルは解約率を以下に下げるのかもポイントになる。いくら新規の顧客を獲得したところで解約が高ければ売上が積みあがっていかない。ヤプリではカスタマーサクセスプログラムや機能の拡張と改善によるプロダクト強化で解約率1%未満の解約率を維持しているとのこと。「解約防止策」も徹底されており、純粋に「リード獲得」に注力できる環境?

一方、アプリが必要な企業を発掘する必要がある。現状、導入事例等をみてみるとBtoC企業が中心。そして顧客のうち過半以上が従業員数300人以上の企業、8割以上が従業員数50人以上の企業で構成とのことで、時間がたつにつれ顧客獲得難易度が高まっていく可能性がある。

そして、これまで大手ベンダーと連携してきた企業をヤプリのサービスにスイッチさせる難易度の一定ありそう。

そうなるとBtoC企業以外の「新領域の発掘」が必要か?

売上推移

ヤプリの売上推移(2016年からの売上、利益、営業利益率のグラフ)
2016年からの売上、利益、営業利益率のグラフ
収益源になる契約アプリ数の推移
収益源になる契約アプリ数の推移

・売上推移は右肩上がりで好調
・売上推移の「2020年12月」は着地予想
・収益になる「契約アプリ数」は年平均130%超で推移

新株式発行並びに株式売出届出目論見書から2016年以降の売上・利益・利益率・契約アプリ数を整理しました。

売上はキレイな右肩上がり。この売上の源泉は「契約アプリ数」。この数をいかに伸ばせるかが収益向上のポイントになる。契約アプリ数は年平均130%成長しており、2021年12月でどれくらい伸びていくのか気になる。

経営者の略歴

庵原 保文(代表取締役社長CEO)

2001年4月 トランスワールドジャパン株式会社入社
2006年2月 ヤフー株式会社入社
2010年11月 シティバンク銀行株式会社入行
2013年2月 ヤプリ設立。代表取締役社長CEO就任(現任)

・ヤフー株式会社にてメディア系サービスの企画職
・シティバンクのマーケティングマネージャー
・ファストメディア株式会社(現 株式会社ヤプリ)を3名で創業

もともとマーケティング畑の方なので、顧客開拓についても効率的効果的な施策を考える組織文になっていそう。

これからの戦略を独自解釈をする

新株式発行並びに株式売出届出目論見書には以下が「課題」として置かれておりました。

課題≒今後の打ち手であり、これから何をすべきかがかかれているので内容を砕いて解釈してみました。課題は抜粋しているので詳細は有価証券報告書を参照ください。

機能開発を通じたターゲット業界の深耕・拡大

新株式発行並びに株式売出届出目論見書の要約
・売上高を成長させるという明確なメリットを顧客企業に提供
・衣服、雑貨、日用品などを取り扱うグローバルブランド、専門店、百貨店、総合スーパー、EC専門店などの小売業態や外食チェーン、スーパーなどの業態での導入が進んでいる
・自社の商品・商材の紙カタログや社内報などの電子化や従業員の研修コンテンツをアプリ上で配信するなどの目的で、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進する様々な企業に業界横断的に導入が進んでいる
・機能開発を通じて、既に顧客ニーズが顕在化している市場における深耕
・未開拓の市場におけるターゲット業界の拡大を実施する

現状はBtoCビジネスを展開している企業が中心。特に前述にあるように300名以上の組織が中心とのことで「ターゲット」は誰でも知っているような企業が対象になる。一定の規模かつBtoCビジネスを展開している企業がすでに懇意にしているベンダーがいたりします。

決まっているベンダーからのスイッチは、コストなどや優位だったとしても意外に難易度が高かったりします。クライアント内での社内調整や実績のないところへの新規発注に二の足を踏むケースがあります。ターゲット企業をどのような観点でアプローチしていくかは気になります。

社内用のツールで使ってもらいながら、実績を作ったうえで本丸のユーザー向けのアプリ開発をスイッチする流れでしょうか。

一方で、BtoC以外の領域開発余地もあるはずです。プロダクトサイトの事例には大学法人がでています。消費者向けのアプリ以外のマーケットも必ずあるはずなので「領域発掘」は必須であり気になるポイントです。

データの活用

新株式発行並びに株式売出届出目論見書の要約
・一般に使われている広告配信識別用IDは匿名性が高くユーザー行動の分析には不向き
・Yappliシステムでは利用者の行動がアプリユーザーのIDに精織に紐づけられる
・匿名性を担保しつつユーザーの行動分析に繋がる有用なビッグデータ として活用することが可能
・アプリユーザーの行動データ、属性データ、イベントデータなどをYappliシステム上のデータサーバーに蓄積
・ビッグデータをアプリユーザーへのプッシュ通知やレコメンデーション、予測機能など、よりアプリユーザーのエンゲージメントを高める施策への活用を検討
・顧客企業のデータベースとも連携することで複数のデータソースを組み合わせたデータ分析やユーザーのセグメンテーションなどを強化していく方針

cookie利用の制限が話題になり続ける。一方、個人をデータにして認識するデジタル社会ではデータ活用は必須であり、「ハウスデータ」のニーズは高まりそう。その背景もあり、サービスとしてデータを保有できることは魅力的。

そして、そのデータ自体は「このプラットフォーム内でしか使えないよ」とすることでスイッチングコストも高くなり、チャーンレートが低くなる。

ビジネスサイドにおけるSaaSモデルの本質は、使い続けることで顧客が離れなくなる仕組みがあること。まさにこの典型。

海外への挑戦

新株式発行並びに株式売出届出目論見書の要約
・顧客はグローバル展開している企業が多く、海外で当社サービスの利用を求める声が強く上がっている
・顧客のニーズに応えるべく海外でのサービス提供についても施策の検討を進めていく

グローバルでユーザーが使いやすいUIUX、国内でユーザーが使いやすいUIUXは違ってくるはず。その文化の溝をどこまで解消できるかが気になる。

競合環境

新株式発行並びに株式売出届出目論見書の要約
・Yappliシステムの開発に創業前から累計約10年の歳月を注ぎサービスの機能拡充、Ul/UXの向上、顧客満足度向上、特許取得などに努め、日本を代表する企業を顧客として抱え、低い解約率を維持するなど Yappliシステムの優位性確保に注カしてきた
・スマートフオンアプリの市場拡大により、複数の企業が類似するサービスを提供しているが主に中小企業向けの機能に留まっている
・中~大企業に向けて提供する企業は業界にはいない
・ノーコードプラットフォームを提供するSaaS企業の競合は存在しないと考えている
・スクラッチでネイティブアプリの開発を行うシステムインテグレーターが主な競合

「ノーコードでアプリを制作できる」という部分だけを切り取ると競合がいない状況。一方で「ノーコードで●●を制作できる」という別領域からの参入はありそう。5フォース分析でいうところの「新規参入」。直近では注目されているShopify等。ただ先行者優位なのも事実なのでそれほど影響はない?もしくは連携をしていくとか?

総括/まとめ

独自性の高いビジネスモデルであり、いまのところ唯一無二のサービスなので顧客深化の先の「次の一手」が気になる。事例化している学校法人や自治体とか可能性がありそうだけどなあ。

5分で読める企業分析

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