【5分で読める企業分析】識学の有価証券報告書を参考に独自見解

5分で読める企業分析

株式会社識学とは

識学の原理に基づき、抽象度の高い知見から日々の組織運営に適用可能な形に開発したサービスを展開(有価証券報告書から抜粋)

つまり「識学」という組織マネジメントの原理原則になる考え方をサービスとして提供をしている(そもそも「識学って?」という人は有価証券報告書のP6を参照ください)。

会社概要

会社名:(株)識学
代表者名:安藤 広大
創業年:2015年3月
上場年:2019年2月
上場コード:7049
発行市場:マザーズ
業種分類:サービス業
会社URL:https://corp.shikigaku.jp/
投資家情報:https://ir.shikigaku.jp/message/
採用サイト:https://en-gage.net/shikigaku_saiyo/

ビジネスモデル

識学が顧客に提供している価値
識学が顧客に提供している価値

顧客に提供している価値を一言で表すと、「マネジメントのノウハウ / ノウハウ浸透ツール」の提供です。

・「識学」というマネジメントメソッドを経営者や役員、管理職などにコンサルティング(研修)
・コンサルティング(研修)の対価としてマネタイズ
・学んだ識学ノウハウを「定着」させるために月額のプラットフォームサービスも展開

【ビジネス構造】

言葉を選ばずにいえば「マンツーマンの研修サービス」。RIZAPのような短期集中型で組織マネジメントについての「論」を学ぶというもの。

トーマツイノベーションは1名の講師に対して数十名で研修をするが、識学は基本的には1名の講師に対して、経営者・役員へマンツーマンで研修をする。そのため、講師1名で研修できる上限ができてしまう。ちなみに営業≒研修できる人なので、営業をしながら研修をしていくため、どうしてと時間的に上限制限ができてしまう。

ビジネス構造では「人×売上のモデル」。売上が人の数に依存するというもの。

売上を継続的に上げ続けるには営業をしながら研修できる人材育成が必要。

【顧客開拓】

新規顧客は、基本的に経営者・役員から入るため開拓難易度が高い。ただ、単にTOP営業をテレアポ等でガンガン回すのではなく、マーケティングと「経営者同士の口コミ」で広げっているとのこと。

また、組織マネジメントがテーマなので、1名の経営者の研修ができ満足度が高ければ、役員→管理職と同じ企業内で広がっていくため、1アカウントを開拓できれば組織内横展開ができるサービス。

加えて、研修ビジネスあるあるで「受けて満足」ケースがある。そのため、プラットフォームサービスという月額サービスを展開している。サービスを使うことで「識学メソッドを忘れない」という浸透を促す仕組みを作っており、アップセルもできる環境を固めている(月額課金モデルなので財務面でも安定化しやすい)。

売上推移

識学の売上推移(2016年からの売上、利益、営業利益率のグラフ)
2016年からの売上、利益、営業利益率のグラフ
識学のストックの売上推移
ストック売上の推移

・2021年2月は着地予想を反映
・売上は年対比約150%ほどで成長
・ストック売上も月次ベースだと順調

有価証券報告書から2016年以降の売上・利益・利益率・ストック割合を整理しました。ストックの売上は2021年2月期の開示しかなく比較対象がないですが月次で公開されているものをみると順調に罪上がっているように見えます。この手のサービスは初期投資+改修費がコストになり、導入している企業が増えれば増えるほど利益が積まれていくので「いつ損益分岐されるか」が気になる。

経営者の略歴

安藤 広大(代表取締役社長)

2002年4月 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(現株式会社NTTドコモ)入社
2006年4月 ジェイコム株式会社(現ライク株式会社)入社
2010年6月 ジェイコム株式会社(現ライクスタッフィング株式会社)取締役東京本社営業副本部長
2012年6月 同社営業副本部長 兼 東京本社営業部長 兼 事業開発部長
2013年1月 株式会社WEIC入社、執行役員社長室室長
2013年1月 合同会社KDI設立、代表社員(現任)
2015年3月 株式会社識学設立、代表取締役社長(現任)
2017年11月 株式会社ARS設立、代表取締役(現任)

・携帯電話販売に関する組織でのキャリアが約10年?
・販売代理店ビジネスには比較的長けている?
・合同会社KDIが個人事業主的に動いていた期間?(全国法人情報データベースをみると過去に(株)識学が入居していたオフィスと同じ)

これからの戦略を独自解釈をする

有価証券報告書(提出日:2020年5月28日)には以下が「課題」として置かれておりました。

課題≒今後の打ち手であり、これから何をすべきかがかかれているので内容を砕いて解釈してみました。課題は抜粋しているので詳細は有価証券報告書を参照ください。

識学について正しく・広く認知される仕組みの構築

知名度向上のための広告施策展開

有価証券報告書の要約
・経営者に識学の存在を届けること
・メッセージも重要
・経営者がつかうSNSで経営者が陥りがちな誤った組織運営と弊害の解説をする広告展開
・地方エリア、オフライン戦略の充実強化を目的に動画活用等新たな広告施策を行う

新規顧客の入口は「経営者」であり、いかに効率的に獲得できるかがポイントになってくる。また、「識学」のメソッドを導入する経営者の数は限られているので(前述のとおりスタートアップやベンチャーが中心)どのようにして数を獲得していくのかがポイントになる。

そのための打ち手として「経営者をターゲティングした広告」「地方エリアの開拓」「新たな広告施策の模索」が挙げられていた。

都内であれば「経営者をターゲティングの広告」の認知は一巡したのでは?と思っています。都内の経営者ターゲティングの打ち手でウルトラCはないと思うので、”刈り取れるまで”やって次点の「地方エリア開拓」か(一時はどこもかしこも「識学の刺激的なメッセージ」「要潤」で、経営者同士の話題にも結構上がっていました)。

全国の企業の11%が東京にあるといわれています。つまり、地方にある企業は89%あるということであり、ここを開拓できればマーケットを一気に広がる可能性がある。

地方になればなるほどオーナー経営者や世襲企業が多いので、ハマればマッチしていきそう。地方開拓ができる人材やチャネルを作れたらグッと伸びていきそう(余談で、M&Aの事業との親和性も高そう)。

ただ、識学のメソッドの言語化が「日本語」であり、グローバル展開ができないため市場はローカルになってしまうのが現状。

講師人材の確保

有価証券報告書の要約
・識学を正しく理解してもうために顧客に正確に解説できる講師が必須
・優秀な人材の獲得が重要
・優秀な人材が成長感を求めて入社する環境を整えている
・人材紹介会社等を通じた採用活動で人員計画の達成を図っていく

ビジネス構造上、どうしても「人」に依存してしまう。そのため売上を上げ続けるには「人材採用」が要になってくる。特に上場企業であれば売上拡大が至上命題なので尚更。

組織マネジメントの考え方をインストールし、顧客にアウトプットしていく仕事のため、「マネジメントの考え方」がない新卒等のほうが吸収は早そう。一方で、対峙先がスタートアップやベンチャー・中小企業の経営者になるので、新卒だと業務ハードルが高い。このバランスをどのようにとっていくのかがポイントか。(結局は中途採用がメインになっていきそう)

講師育成の仕組み化

有価証券報告書の要約
・講師育成の期間は、マニュアル・FAQ・動画確認・OJT・ロールプレイング等の手段で学びの時間に集中させる仕組みを構築
・平均3ヶ月ほどの期間で入社後講師認定
・ノウハウを高めることで育成リードタイムの短縮に取り組む

人材の採用ができたとしても「講師(=営業)」として外に出れなければ意味がない。識学メソッドを理解するまでに3ヶ月ほどで、実際のサービスと同じ期間が必要とのこと。この期間の圧縮ができれば、顧客へのサービス提供期間の圧縮ができるはず。そうなれば一人当たりの担当顧客数が上がるので生産性も上がる。

地道だが、この取り組みは育成観点以外でもインパクトが出そう。

社会性獲得を目的とした識学の活用

有価証券報告書の要約
・学生や社会人のスポーツチーム、学校の教育コミュニティ、家庭まで、さまざまな集団で発生する課題に対して解決策を提供することが可能
・これらの集団で実績を積み上げることが社会性獲得の手段としても有効
・これらの集団に対する識学の提供についても取り組んでいく

顧客マーケット拡大のためにも「経営者(+α)」軸から別の軸は必ず必要。

組織マネジメントは育成/教育に紐づくので、教育関連ビジネスや学校の法人関連など可能性がありそう。

販売経路や機会の多様化・拡大

有価証券報告書の要約
・潜在的な見込顧客とネットワークを有する法人と提携し、顧客紹介の代理店を増やしている
・パートナー制度も導入している
・M&Aや事業承継等に代表される組織文化や風土が変革される前後で、識学の活用は有効
・M&A分野にネットワークを有する法人との連携も視野に入れた需要の取込施策も検討

エリア戦略の一手として販売代理店を展開するというもの。もともと代表の安藤広大氏は販売代理店ビジネスが過去キャリアであり、その辺りの契約周りやインセンティブについての知見はありそう。

あとは地域地域で有力な販売パートナーが発掘できればカバーできない地方エリア開拓が進みそう。

所感

・導入企業をどこまで広げられるのか
・既導入企業に対してアップセルができる「組織マネジメント」軸以外のサービスをつくれるか
・競合サービスとの差別化

総じて、マーケットの拡張性があるのか?が今後気になるところ。コーポレートサイトの事例をみると新興企業の事例が多く、どこまでマーケットを拡大し続けられるかが未知数。ただ、M&A支援やファンド、スポーツスポンサーも始めており、「種まき」をしている感じ?

総括/まとめ

株式会社識学について独断と偏見と解釈で分析してみました。

「識学」というメソッドは独自なものであり、それ自体が差別化要素。あとはどれだけ「エリア」と「領域」を広げられるかがポイントだなと思いました。

もちろん人材採用も大切ですが、優先度は劣る気がします。小さいエリア/領域で大量採用をしても顧客がカニバっていたら意味がありません。

個人的にはとても面白い会社なので注目し続けたいと思います。

5分で読める企業分析

他の企業の「5分で読める企業分析」まとめも順次作っています。

タイトルとURLをコピーしました