株式会社サーキュレーションとは
2014年設立。主な事業は法人企業向けの4つのサービスを展開。経営課題の解決をメインとした「プロシェアリングコンサルティング」サービス、システム開発支援をメインとした「FLEXY」サービス、新規事業立案をメインとした「Open Idea」サービス、事業承継支援の「人を繋ぐ事業承継」サービスに分類される。
会社概要
会社名:(株)サーキュレーション
代表者名:久保田 雅俊
創業年:2014年1月
上場年:2021年7月27日
上場コード:7379
発行市場:マザーズ
業種分類:サービス業
会社URL:https://circu.co.jp/
採用サイト:https://recruit.circu.co.jp/
>>>数字でみるサーキュレーション
ビジネスモデル

顧客に提供している価値を一言で表すと、「経営課題解決・実働支援のプラットフォーム」の提供です。
・さまざまな知見をもっているプロ人材のマッチングプラットフォーム
・プロジェクトごとの短期で利用できる
・上流設計だけでなく実働する人材を紹介
【ビジネス構造】
4つのサービスを展開。それぞれのサービスの支援領域は、経営課題解決・システム開発・新規事業立案・事業承継とバラバラだが、全サービスの根元にあるのは「プロ人材のデータベース」。
新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)を参考に図示してみました。

17,000名を超えるプロ人材を「種」に企業の抱えている人材不足課題を解決している。この人材データベースを「企業課題」で分解してサービス化している。
各サービスのサービス概要とポイントは以下に有価証券報告書から抜粋。
「プロシェアリングコンサルティング」サービス
サービス概要
主に、中小・ベンチャー企業の経営者、大企業の経営者・役員層向けに、プロ人材を活用した、経営課題解決支援サービス。企業は専門性の高いプロ人材を、雇用ではなくプロジェクト単位で必要な期間のみ活用できるため、効率的に事業を展開、成長を加速させることが可能。
サービスのポイント
①初期費用がない月額制サービス(人材紹介やヘッドハンティングの場合、理論年収の20~50%程度が頭金で必要)
②6~12ヶ月程度でミッションごとに入れ替え可能
③ノウハウ内製化が可能(外部委託は社内にノウハウの蓄積がされにくい
④高い専門性と幅広い人材を活用できる
⑤要件定義からプロジェクト終了まで一貫してコンサルタントがサポート
⑥幅広い業界とテーマでの実績(特定の業界、業種、会社規模、経営課題に絞ってない)
・新規事業開発、品質改善・生産性向上、販路拡大(営業支援)、人事関連、広報・マーケティング、物流コスト削減、経営戦略策定、海外展開支援、M&A戦略構築、資本政策・資金調達、システム導入・情報システム部門立ち上げ 等
「FLEXY(フレキシー)」サービス
サービス概要
CTO経験者、エンジニア、デザイナーによる支援サービス。登録されているエンジニア、デザイナーを企業のニーズに応じて、フレキシブルに活用できる準委任契約型サービス。CTO経験者が登録しており、新規Web/ITサービスの開発・成長、エンジニア組織の目標・評価制度設計、データマイニング、IoTサービス開発案件等を得意にしている。
サービスのポイント
①契約形態・サービスフロー等は「プロシェアリングコンサルティング」サービスと同様
②業務スコープ、稼働頻度・回数等を柔軟に定めることができる
「Open Idea(オープンアイデア)」サービス
サービス概要
新規事業起ち上げ支援サービス。登録しているプロ人材からアイデアを募ることで、短期間で社内内製型新規事業開発では生まれにくい実行可能な多数の事業アイデアを募ることができる。
また、特定の業界・業種に既に新規事業で進出しようとしている企業の場合は、その業界出身の事業開発を強みとするプロ人材による第三者調査レポート作成も可能。
「人が繋ぐ事業承継」サービス
サービス概要
人と組織、成長戦略に着目した事業承継支援サービス。これまで「税」「M&A」の観点から語られることが多かった事業承継に対し、プロ人材が「人」「事業」の観点から事業承継支援をする。優秀な人材の確保が困難な地方企業に、専門性の高い人材を提供。
サービスのポイント
① 雇用ではなく3-12ヶ月のプロジェクトベース
②「地方企業」と「プロ人材」との協業体制を構築
マネタイズポイントと金額
サーキュレーションは自社で抱えているプロ人材を企業につなぐマッチングサービスを展開している。マネタイズは企業からプロジェクトごとの利用料になっている。目安金額については新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)に明記があった。
(例)30-50万円/月 × 12ヶ月(隔週稼働)
(例)50-60万円/月 × 18ヶ月(週1日稼働)
(例)60-80万円/月 × 6ヶ月(週複数日稼働)
プロジェクトごとの人材マッチングという点ではクラウドソーシングに近しい。ただ、クライアントのコミュニケーション先が「経営トップ層」と「それに準ずる層」になるので顧客ターゲットの重なりは多くない。また、登録されている人材もサーキュレーションはプロ人材であり、クラウドソーシングは学生~副業ビジネスパーソンがメインになるため、登録者の重なりは多くない。一方、同じようなビジネスを展開している「株式会社みらいワークス」とはド競合になるか。
【顧客開拓】
人材ビジネスはリクルートで使われる「リボン図」で考えるとシンプルに理解しやすい。左右のどちらかが少ないと全体の面積が増えていかない構造になっている。

サーキュレーションにおいては以下のような解釈になる。
・プロ人材の数が少なければ企業は集まらない
・企業(≒案件)が少なければプロ人材が集まらない
法人顧客開拓は、主に3つのチャネルから集客を行っているとのこと。
①金融機関(都市銀行、地方銀行、信用金庫)アライアンス経由
②インターネット経由
③その他自社活動
有価証券報告書によると、「金融機関アライアンス経由」について強化中であり、2021年4月時点で、金融機関57行(都市銀行3行、第一地方銀行33行、第ニ地方銀行12行、信用金庫9行)とビジネスマッチング契約を締結している。
金融機関経由の紹介は、月間平均234社(2021年7月期第3四半期実績)。企業は金融機関から資金面での融資を受け、その融資を元手にサーキュレーションからプロ人材の提供を受け、事業拡大や事業承継問題の解決に取り組んでいる。
同社代表の久保田氏の原体験になる「地方中小企業のビジネスの脆弱さ、経営における経験・知見が不足している層に対して積極的な事業展開を行っている。
また、インターネット経由や自社活動を強化するために、オンラインマーケティングだけでなくTV CMやTaxi CMに広告宣伝費を投下しており、登録するプロ人材+導入企業の認知度向上を図っている。
実際にサーキュレーションのサービスを導入している企業はコーポレートサイトに掲載してあり、中小企業・ベンチャーを中心に導入が進んでいる印象。(事例ページ)
地方拠点展開は徐々に進めており、地銀連携や地場ネットワークを強めていくことで地方企業の開拓にも注力している。
ビジネス構造上、プロ人材といわれる方々の稼働を以下に増やせるかが事業グロースのキモになっているため導入企業開拓に加えて、課題発見するコンサルタントの力量が必要になる。
「これからの戦略を独自解釈をする」で後述するが、継続成長のためには以下3点がポイント。
①他社との差別化と強みの周知
②プロ人材がアクティブに稼働しているサービス設計
③コンサルタントの「課題設定能力」の質と、プロ人材の「業務実働能力」の質
売上推移

2016年からの売上、利益、営業利益率のグラフ
・売上推移は右肩上がりで好調
・成長率も高い水準で進捗
新株式発行並びに株式売出届出目論見書から2016年以降の売上・利益・売上昨対を整理しました。売上はキレイな右肩上がり。2020年7月の経常損失は「未来に向けた集中投資(更なる認知度向上を目的としたTV CM、Taxi CMの制作・放映、人材採用、東北支社開設、中四国支社開設等)を実行」のため発生したものと表記があった。会社やサービスの認知+拡販先を増やすための投資だったもよう。
経営者の略歴
久保田 雅俊(代表取締役社長)
[サマリー]
2005年4月 株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)入社
2014年1月 当社設立 代表取締役 就任(現任)
[詳細]
学生時代、進学塾を経営していた父が倒れ、21歳で会社の清算を経験。地方中小企業の脆弱さ、経営における「経験・知見」の重要性を痛感。
大学卒業後、大手総合人材サービス「株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)」に入社。父の介護を続けながら、IT業界の採用コンサルタントとして活躍。最年少部長に抜擢。リーマンショック後の金融業界を管掌しV字回復を果たす。その後、社内ベンチャーで新サービス「i-common」を立ち上げる。同社初のカンパニー社長に就任。
グラフで見るサーキュレーションのKPI
有価証券報告書に目標とする経営指標として、「プロジェクト稼働件数」×「顧客請求単価」で算出される売上高を重視していると明記がある。経営指標になっている「プロジェクト稼働件数」は以下のグラフがそれぞれ密に関係している。
・累積取引企業数の推移=プロジェクト稼働ができた/できる企業数の推移
・累積稼働プロジェクト数と社あたりの稼働プロジェクト数の推移=社あたりの稼働プロジェクト数の推移
・新規/既存プロジェクト内訳推移=プロシェアリングコンサルティングサービス+FLEXYサービスにおける新規/既存プロジェクトの割合と推移
・プロ人材登録推移=プロジェクト稼働できるプロ人材の人員数の推移
累積取引企業数

累積の取引企業数は順調に伸びている。2021年7月期については3Qまでの数になっており、2020年対比で130%成長は硬いか。
累積稼働プロジェクト数と社あたりの稼働プロジェクト数

精緻な数字はわからないため、このグラフは累積稼働プロジェクト数に累積取引企業数を割っただけの単純なグラフになっている。ただ、それだけでも年々、1社あたりの稼働プロジェクト数は増え続けている。
新規/継続プロジェクトの内訳

年ごとの新規/既存のプロジェクト内訳。有価証券報告書では、プロシェアリングコンサルティングサービスとFLEXYサービスの新規(黄色)・継続(赤)の推移でしか表記でした。その他に分類されているのがその他サービス(新規&継続)になります。
「累積稼働プロジェクト数と社あたりの稼働プロジェクト数」のグラフでも分かるように、継続プロジェクトが増加傾向になっている。
プロ人材の登録数

プロ人材の登録は安定的に積み上げていっている。ここでの登録数は2021年4月末時点での登録者総数になっており、サービス退会済みの方を含めない数になっている。
これからの戦略を独自解釈をする
新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)には「経営戦略」と「課題」が記載してあります。経営戦略&課題≒今後の打ち手であり、これから何をすべきかが書かれています。資料を参考にしながら、これからの戦略を独自解釈したいと思います。経営戦略や課題は抜粋しているので詳細を知りたい方は有価証券報告書を参照ください。
競合他社との差別化
サーキュレーションが顧客に提供している価値は「経営課題解決・実働支援のプラットフォーム」。もっとかみ砕くと、サーキュレーションのコンサルタントが企業の課題をあぶり出し、専門能力を持つ人材をつないで課題解決・実働を支援するというもの。なので、サーキュレーションのサービスは「経営コンサル+人材マッチングプラットフォーム」になる。
経営コンサル文脈で競合になりえるのは、戦略コンサル企業(マッキンゼー、各財閥総研
、個人経営のコンサル会社など)。ただし、サーキュレーションが対象としている層は「中小・ベンチャー企業のTOP Management層」となっているため外資や上場している企業が狙っている層との重なりは少ない。
また人材マッチングプラットフォーム文脈で競合になりえるのは、クラウドソーシング会社(クラウドワークスやランサーズなど)やアウトソーシング会社。ここも前述した通り、サーキュレーションが対象としている層は「中小・ベンチャー企業のTOP Management層」であるため、直接の競合になることは少ない。
各企業のポジションを図版化するとこんな感じでしょうか。

”上”と”下”にいる疑似競合との差別化については、IPO後にサーキュレーションが「何を」「どのようにしてくれるのか」をしっかりと訴求し、認知を広めていくことが目の前の打ち手か。
その後は”上”なのか”下”なのか、はたまた上下ポジションの企業と戦略的に連携をしていくのか。個人的に疑似競合になる企業との戦略的連携は打ち手の1つとしては面白そう。
プロ人材として登録している方々のアクティブ化
プロ人材として登録している人は17,000名以上。プロ人材として登録している人たちはサーキュレーションのサービスだけに登録をしなければならないわけではない(必要性もない)。同様のサービスはいくつもあり(顧問名鑑、i-comon※、みらいワークス、プロパートナーズなど)、登録者としては同時に別のサービスに登録している可能性も高い。
これは転職市場と似ている。転職者としては希望の仕事に就ければ、正直どこの転職サイト/エージェントでも同じ。プロ人材も同じような構造で、当人として「やりたいこと」ができ「収入を得られれば」どのプラットフォームに登録しても同じになる。
なので、サーキュレーションとしては登録しているプロ人材をいかにアクティブ化できるかがポイント。人材稼働のアクティブ化を促すためには「企業の課題別にサービスを展開」し、「活用する企業を増やしていく」ことが重要になる。
現状のサービスラインナップをみても、中小ベンチャー企業が抱えている課題ごとにサービスを拡充/展開をしているため、今後も「課題別サービス」の横展開を進めていく気がする。
また、サービス拡充をしながら同時に利用する企業も増やす必要があるため、市場の認知を高めながら利用企業を増やす施策を打ち続けていくと考えられる。
コンサルタントとプロ人材の質向上
サービス導入企業のプロジェクト開始のタイミングで、サーキュレーションのコンサルタントが全体設計(キックオフ~ゴールまで)を行うことになっているとのこと。この設計の筋の良し悪しでリカーリングモデルのベースになる発注リピートや追加プロジェクトに関わってくる。
また、設計だけでなく実働部分ではプロ人材の質も重要になる。設計がうまくいったとて、実働がよくなければリピートも追加プロジェクトもしなくなる。事業戦略上のKPIに「コンサルタントの質」「プロ人材の質」が含まれるため両方の質向上は重点施策になるはず。
総括/まとめ
サーキュレーションは中小ベンチャーに特化した経営課題解決にフォーカスした事業展開をしている。そのため不景気などで一気にダメージを受けやすい事業体である一方、国策としての「副業支援」が今後同社にとっての追い風になりそう。
そして、疑似競合になっている戦略ファームやクラウドソーシング会社との戦略的連携を行っていくことで、これまで以上に価値をていきょうできるのでは?と感じている。
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