「フィンテック(Fintech)銘柄」「お金の管理にフォーカスしたビジネス」「SaaSサービス」「同時期創業」など重なる部分が多い2社。
色々と比較をしてみるとビジネスで競合になっているのはごく一部というのが分かります。2社の有価証券報告書に記載してある内容をパッと比較できるように要約・サマリーしています。詳しく知りたい・読み込みたい方は各社の有価証券報告書を参照ください。
▶株式会社マネーフォワード:有価証券報告書_第9期
▶フリー株式会社:有価証券報告書_第8期
結論からまとめると、マネーフォワードとフリーは似て非なる企業です。詳細は記事で参考にしてもらえればと思います。
・マネーフォワードとフリーはド競業ではない
・サービスの思想が違う
・顧客層はマネーフォワードは「個人」、フリーは「法人」がメイン
※ただしマネーフォワードのBusinessドメインは被りがある
本記事は「ビジネスモデル」の比較になっています。ユーザーとしてサービスの比較をしたい方は以下の記事などを参考にしてみてください。
▶freeeとマネーフォワードの比較、選び方
マネーフォワードとフリーを比較した7つの項目
①業績と利益
②チャーンレート
③創業からの沿革
④経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
4-1.会社の経営方針
4-2.経営環境
4-3.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
4-4.事業環境に関する事項
4-5.業績変動等に関する事項
4-6.法的規制等に関する事項
4-7.組織体制、内部管理体制等に関する事項
4-8.その他
⑤役員プロフィール
⑥役員数と役員報酬
⑦従業員状況
7-1.従業員数(人)
7-2.平均年齢(歳)
7-3.平均勤続年数(年)
7-4.平均年間給与(円)
マネーフォワードとフリーの比較
業績と利益


マネーフォワードとフリーの業績を比較してみました。
SaaSサービスは、サブスクリプション方式でユーザーに提供し、継続して利用されることで収益が積み上がるストック型の収益モデルです。投資期間が長くなりやすく、現状2社とも経常損失になっています。
ただし、チャーンレートが低く保たれれば必然とストックになる顧客が増え続け、損益分岐を超えれば利益を生み続ける構造。
有価証券報告書にも記載がありますが、両社とも現状は「投資期間」と位置付けているため、経常損失は想定内の進捗。
チャーンレート

マネーフォワードとフリーのチャーンレートの比較です。
同じ領域での比較をするためにBtoB向けのサービスで比較しています。マネーフォワードのチャーンレートが2019年以前のものがIR資料に出ておらず直近だけになっていますが、総じてSMBのチャーンレート平均よりも低い数値になっています。
>>>チャーンレートの平均について書かれている記事


チャーンレートを低くするための施策として、マネーフォワードは「サービスの改善」「カスタマーサポートの充実」、フリーは「UI/UXの改善」「既存機能の強化」「カスタマーサクセスの強化」に注力しているとのこと。
SaaSサービスはチャーンレートの低さが今後の業績にインパクトをしていくので一定の低さを保つ施策が大切になってきます。
創業からの沿革

マネーフォワードとフリーは創業年が同じ2012年に設立されています。
マネーフォワードは一貫として「個人のお金の管理」にフォーカスするための事業展開を行っています。お金にフォーカスしていくと「個人のお金管理」の延長線上に「会社のお金管理」が存在しています。そのため、時系列の通り、徐々に「会社のお金管理」に入り込んでいったという印象があります。
フリーについては創業から「会社のお金管理」だけにフォーカスして事業展開をしてます。お金の管理にかかわる業務についてはじわじわ横展開をしてラインナップを増やしています。そして、面白いのが2019年から展開している「アプリケーションプラットフォーム」という考え方。「会社のお金の管理」を軸にその他の業務に必要なサービスはAPI等で繋げていくという考え方です。
この沿革だけを見ても、マネーフォワードとフリーの事業思想が全く違ったものというのがわかります。
経営方針、経営環境及び対処すべき課題
有価証券報告書に記載のある経営方針などをサマリーでまとめました。ポイント、ポイントで2社の思想がにじみ出ています。
マネーフォワードはアプリプラットフォーマーとして、フリーは業務クラウドサービサーとしての表記が見て取れます。





詳細の比較データが欲しい方がいればご一報ください。無料でスプレッドシートを共有いたします。
役員プロフィール
マネーフォワードとフリーの役員プロフィールの比較です。役員のプロフィールをざっと見る印象が事業の内容を反映しているように思います。
マネーフォワードの役員については前職や前々職にBtoC向けビジネスをしている企業に所属をしており、フリーの役員については、クラウドサービスなどのビジネスを展開している/戦略コンサルにてBtoBのビジネスを経験している等の特徴があります。
マネーフォワードの役員プロフィール
代表取締役社長CEO 辻庸介
生年月日:1976/6/30
プロフィール:京都大学農学部を卒業後、ペンシルバニア大学ウォートン校MBA修了。ソニー株式会社、マネックス証券株式会社を経て、2012年に株式会社マネーフォワード設立。新経済連盟 幹事、シリコンバレー・ジャパン・プラットフォーム エグゼクティブ・コミッティー、経済同友会 第1期ノミネートメンバー。
取締役執行役員CFO 金坂直樹
生年月日:1984/11/27
プロフィール:2007年に東京大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券株式会社の東京オフィス、サンフランシスコオフィスにて、テクノロジー・金融業界を中心にクロスボーダーM&Aや資金調達のアドバイザリー業務、投資先企業の価値向上業務に従事。2014年に当社入社。2017年に取締役に就任。2019年9月、マネーフォワードシンカ株式会社代表取締役に就任。2020年5月に設立したマネーフォワードベンチャーパートナーズ株式会社「HIRAC FUND」の代表パートナーも務める。
取締役執行役員CTO 中出匠哉
生年月日:1977/3/20
プロフィール:2001年ジュピターショップチャンネル株式会社に入社。ITマネージャーとして注文管理・CRMシステムの開発・保守・運用を統括。2007年にシンプレクス株式会社に入社し、証券会社向けの株式トレーディングシステムの開発・運用・保守に注力。その後FXディーリングシステムのアーキテクト兼プロダクトマネージャーとして開発を統括。2015年に当社に入社し、Financialシステムの開発に従事。2016年にCTOに就任。
取締役執行役員 竹田正信
生年月日:1976/7/17
プロフィール:2001年インターネット広告代理店にて企画営業職に従事。2003年株式会社マクロミルに入社し、2008年取締役就任。同社の経営企画部門を主に管掌し、事業戦略、人事戦略、企業統合、新規事業開発を主導。2012年株式会社イオレに転じ、取締役経営企画室長に従事。2016年株式会社クラビス取締役・CFOを経て、2017年より、当社グループに参画。
社外取締役 車谷暢昭
生年月日:1957/12/23
プロフィール:株式会社三井銀行に入行。株式会社三井住友フィナンシャルグループ副社長執行役員、株式会社三井住友銀行代表取締役兼副頭取執行役員に就任。2017年にシーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン株式会社代表取締役兼共同代表に就任。2018年に株式会社東芝取締役、代表執行役会長CEOに就任し、2020年4月に同社代表執行役社長CEOに就任。
社外取締役 田中正明
生年月日:1953/4/1
プロフィール:元株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ代表取締役副社長。2011年から2015年まで三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社取締役。「金融審議会 金融制度スタディ・グループ」等複数の政府系会議メンバー。1977年に株式会社三菱銀行に入行して以来、MUFG Union Bank, N.A.頭取兼最高経営責任者、株式会社三菱UFJ銀行専務執行役員米州総代表などを歴任。2017年2月より金融庁参与に就任。2019年3月に日本ペイントホールディングス株式会社代表取締役会長に就任し、2020年1月に同社代表取締役会長兼社長CEO、2020年3月に同社取締役会長代表執行役社長兼CEOに就任。
社外取締役 倉林陽
生年月日:1974/6/25
プロフィール:富士通株式会社及び三井物産株式会社にて日米でのベンチャーキャピタル業務を担当後、Globespan Capital Partners及びSalesforce Venturesの日本投資責任者を歴任。2015年3月よりDraper Nexus Venture Partners(現DNX Ventures)に参画しManaging Directorに就任、2020年12月に同社Managing Partner & Head of Japanに就任。同志社大学博士(学術)、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営大学院修了。著書「コーポレートベンチャーキャピタルの実務」(中央経済社)。
社外取締役 岡島悦子
生年月日:1966/5/16
プロフィール:三菱商事株式会社、ハーバードMBA、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2002年にグロービス・グループの経営人材紹介サービス会社であるグロービス・マネジメント・バンク事業立上げに参画、2005年より代表取締役。2007年に株式会社プロノバ設立、代表取締役就任。経営チーム強化コンサルタント、ヘッドハンター、リーダー育成のプロ。
社外取締役 上田亮子
生年月日:1973/2/25
プロフィール:みずほ証券株式会社入社後、日本投資環境研究所に出向。金融庁金融研究センター特別研究員、みずほインターナショナル(ロンドン)を経て、日本投資環境研究所主任研究員。2020年3月より現職。政策研究博士。首相官邸「未来投資会議・構造改革徹底推進会合」金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」、IFRS財団“Management CommentaryConsultative Group”等の政府や国際機関の委員を歴任。
フリーの役員プロフィール
代表取締役CEO 佐々木大輔
生年月日:1980/9/18
プロフィール:Googleで、日本およびアジア・パシフィック地域での中小企業向けのマーケティングチームを統括。 その後、2012年7月freee株式会社を設立。 Google以前は博報堂、投資ファンドのCLSAキャピタルパートナーズにて投資アナリストを経て、レコメンドエンジンのスタートアップであるALBERTにてCFOと新規レコメンドエンジンの開発を兼任。 一橋大学商学部卒。専攻はデータサイエンス。 日経ビジネス 2013年日本のイノベーター30人 / 2014年日本の主役100人/2015 Forbes JAPAN 日本の起業家BEST10に選出。
取締役CFO 東後澄人
生年月日:1981/3/19
プロフィール:子午線の街、兵庫県明石市出身。東京大学工学部卒。同大学院ではJAXAの研究室に所属。McKinsey、Googleでの経験を経て、2013年からfreeeに参画。趣味は卓球・ドライブ・ドラクエⅢ。
取締役COO 尾形将行
生年月日:1978/7/31
プロフィール:総務省、内閣官房、外務省、アクセンチュア戦略コンサルティンググループを経て、クラウドを切り口に中小企業の生産性を世界レベルに引き上げたいという思いでfreeeに参画。スタンフォード大学ロースクール修士、香港科学技術大学MBA取得。
取締役CDO 平栗遵宜
生年月日:1981/7/18
プロフィール:2012年、新卒でfreeeに入社。ソフトウェアエンジニアとして会計freee・給与計算freeeをリリースし、その後開発チームの組織づくりに携わる。趣味は子供とキャンプ。東京大学法学部、千葉大学専門法務研究科卒。法務博士。
社外取締役 川合純一
生年月日:1965/8/19
プロフィール:
1990年4月International Consulting of Japan入社
1994年4月株式会社リクルート入社
2007年4月McKinsey & CompanyInc. Japan入社
2009年4月株式会社アイ・エム・ジェイ入社
2012年7月Google株式会社(現 グーグル合同会社)入社
2014年10月グーグル合同会社 執行役員
2016年1月当社社外取締役(現任)
2017年11月グーグル合同会社 上級執行役員(現任)
社外取締役 浅田慎二
生年月日:1977/7/7
プロフィール:
2000年4月伊藤忠商事株式会社入社
2015年3月セールスフォースドットコム入社
2018年2月セールスフォースドットコム 執行役
2019年2月セールスフォースドットコム 常務執行役員
2020年4月One Capital株式会社 代表取締役CEO(現任)
2020年6月弁護士ドットコム株式会社 戦略アドバイザー(現任)
2020年7月株式会社スマレジ 社外取締役(現任)
役員数と役員報酬
両者ともに役員にはストックオプションを付与しています。

マネーフォワードの役員区分ごとの報酬総額、員数
役員区分 | 報酬などの総額(千円) | -内訳 | 対象となる役員の員数(名) |
---|---|---|---|
取締役 | 113,000 | 基本報酬:91,000 ストックオプション:22,0005 | 7 |
社外取締役 | 61,000 | 基本報酬:53,000 ストックオプション:7,000 | 7 |
フリーの役員区分ごとの報酬総額、員数
役員区分 | 報酬などの総額(千円) | -内訳 | 対象となる役員の員数(名) |
---|---|---|---|
取締役 | 117,761 | 基本報酬:58,485 ストックオプション:59,275 | 4 |
社外取締役 | 600 | 基本報酬:600 ストックオプション:— | 2 |
従業員状況

従業員状況 | マネーフォワード | フリー |
---|---|---|
従業員数(人) | 579 | 481 |
平均年齢(歳) | 33.3 | 32.2 |
平均勤続年数(年) | 2.3 | 2.5 |
平均年間給与(円) | 6,136,421 | 6,822,000 |
まとめ
一見同じようなビジネスだと思いきや、よくよく比較してみるとメインの事業思想が全く違うことが分かりました。
とはいえ、BtoBのストックビジネスは美味しい領域なのでどんどん競争が激化はしていきそうな気がします。