WACULが考えている25の経営・事業リスク[新規上場申請のための有価証券報告書サマリー]

企業分析

事業リスクとは

有価証券報告書には「事業にかかわるリスク」の項目が設けられています。具体的には、投資家の投資判断に影響を及ぼす可能性がある項目の記載です。

つまり、有価証券報告書に記載されている事業リスクは同社が現時点で認識している経営・事業のリスクになるものです。

この情報は投資家だけでなく、これから就職を考えている方にとっても参考になります。

本記事は、有価証券報告書に記載されている「事業リスク」をサマリーとして抜粋したものです。詳細情報については本記事の参照元になるコチラの有価証券報告書を確認ください。

WACULとは

数字でみるWACUL

数字でみるWACUL

詳細は「数字でみるWACUL【新規上場申請のための有価証券報告書より】

会社概要

会社名:(株)WACUL
代表者名:大淵 亮平
特色:主力サービス「AI analystで各社に閉じていたWebサイトのデータを集め、誰にでもデジタルマーケティングにおける分析と改善のツールを提供
創業年:2010年9月
上場年:2021年2月21日予定
上場コード:4173
発行市場:マザーズ
業種分類:情報・通信
会社URL:https://wacul.co.jp/
IRライブラリー:-
採用サイト:https://wacul.co.jp/recruit/

WACULが考えている事業リスク

経営・事業リスクはいくつかの分類に分けて記載があります。

(1)市場など自社を取り巻く環境に関するリスク
・業界市場
・競争環境の激化
・Google Inc.の動向
・法的規制
・技術革新等
・システム障害・不具合

(2)ビジネスモデル等の自社の事業に起因するリスク
・特定経営者への依存
・新規事業
・単一事業
・特定サービスへの依存
・LTV(顧客生涯価値)
・プラットフォームビジネスにおける先行投資
・ストック・オプション行使による株式価値の希薄化
・情報管理体制
・システム開発
・知的財産権
・内部管理体制の強化
・コンプライアンス体制
・配当政策
・新型コロナウイルス等の感染症の蔓延に関するリスク
・ベンチャーキャピタル等の株式所有割合に伴うリスク

WACULが考えている25の事業リスクのサマリー

(1)市場など自社を取り巻く環境に関するリスク

業界市場

▶[リスク1]市場の成長ペースが大きく鈍化した場合
▶[リスク2]同様のペースで順調に成長しない可能性
▶[リスク3]大手企業による新規参入等により市場シェアの構成が急激に変化した場合

[背景]
・国内DX市場及び国内AIシステム市場は成長を続けている
・この市場成長傾向は継続するものと見込んでいる
・その中で一定のシェアを獲得するべく、サービスの提供・拡販を図っている
・市場の拡大が進んだ場合でも、同様のペースで順調に成長しない可能性がある
・市場が成熟していないため、今後大手企業による新規参入等により市場シェアの構成が急激に変化した場合は当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性がある

競争環境の激化

▶[リスク4] DX市場の拡大に伴い市場に新規参入者が増えた場合

[背景]
・新規参入や新製品の普及など競争環境の激化を重要な課題として認識している
・DX市場の拡大に伴い、当社の属する市場に新規参入者が増えた場合には当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性がる
・独自データの蓄積などを通じて、こうした脅威の軽減を図っている
・具体的には、Googleアナリティクスを通じたアクセス解析データ等のビッグデータと分析から生まれる改善施策の成否といったノウハウを蓄積している

Google Inc.の動向

▶[リスク5]Google Inc.の事業戦略の転換並びに動向

[背景]
・「AIアナリスト」等はGoogle Inc.が提供するGoogleアナリティクスと連携してサイトデータを取得し、データ解析をするサービスになっている
・Google Inc.とは継続的により良好な関係の維持に努めている
・Google Inc.の事業戦略の転換並びに動向によって事業及び業績に影響を及ぼす可能性がある

法的規制

▶[リスク6]インターネット関連事業を規制対象とした規制や解釈変更がなされた場合

[背景]
・事業継続に著しく重要な影響を及ぼす法的規制はない
・インターネット関連事業を規制する法令は徐々に整備されてきている
・今後、Cookieの使用の制限など、インターネットの利用や関連するサービス及びインターネット広告を含むインターネット関連事業を営む事業者を規制対象とする新たな法令等の規制や既存法令等の解釈変更がなされた場合は事業運営に制約を受ける

技術革新等

▶[リスク7]技術革新に対応するためのシステム開発等の適切な対応に支障が生じた場合

[背景]
・インターネット関連市場は情報技術の進化とそれに伴う市場ニーズの変化に迅速に対応することが求められている
・技術革新に応じたシステムの拡充・改善及び事業戦略の修正などを迅速に行う必要があるものと考えている
・アジャイル開発で迅速にシステム開発を行い機能の追加及びユーザビリティを強化する体制を敷いている
・予期しない技術革新等があった場合、その対応に係る追加のシステム開発費用が発生する可能性がある
・システム開発等の適切な対応に支障が生じた場合は各サービスにおける競争力の低下及び顧客の流出等を招く可能性があり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性がある

システム障害・不具合

▶[リスク8]対策を講じているにもかかわらず障害が発生した場合

[背景]
・インターネットを利用しているため、自然災害、事故、不正アクセスなどによって通信ネットワークの切断、サーバー等ネットワーク機器に作動不能などのシステム障害が発生する可能性がある
・システム障害の発生防止のために、システムの冗長化、脆弱性検査、不正アクセス防御等の対策を講じている
・対策を講じているにも拘らず、障害が発生した場合には、当社に直接的損害が生じるほか、サーバーの作動不能や欠陥等に起因する取引の停止等についてはシステム自体への信頼性の低下を招く可能性がある

(2)ビジネスモデル等の自社の事業に起因するリスク

特定経営者への依存

▶[リスク9] 代表取締役社長大淵亮平と取締役インキュベーション本部長垣内勇威の業務執行が困難になった場合

[背景]
・代表取締役社長である大淵亮平は、当社設立以来、当社の事業に深く関与し、デジタルマーケティングに関する豊富な知識と経験を有している
・経営戦略の構築やその実行に際して重要な役割を担っている
・同様に取締役インキュベーション本部長である垣内勇威は、創業初期から当社の事業に深く関与し、デジタルマーケティングに関する豊富な知識と経験を有している
・研究開発および新規事業の立案やその実行に際して重要な役割を担っている
・特定の人物に依存しない体制を構築すべく組織体制の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めている
・何らかの理由により業務執行が困難になった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性がある

新規事業

▶[リスク10]新規事業の失敗によりコストのみが計上される可能性がある

[背景]
・今後、市場のニーズにあったサービスをいち早く投入し、新規事業を立ち上げ続けることが重要な課題と認識している
・「AIアナリスト」をプラットフォームとしたストック型の収益を安定的に獲得することができるサービスの開発を継続的に行い、さらなるステップアップを視野に入れた事業の収益性向上を目指していく
・各新規事業・サービスは構想段階であり、結果的に実現しない又は実現したとしても十分な収益が獲得できず撤退する可能性がある
・事前に十分な検証を行った上で開発等を開始する方針
・結果的に新規事業に失敗した場合、コストのみが計上されることから当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性がある

単一事業

▶[リスク11]当該市場の成長が鈍化するような場合
▶「リスク12]事業環境の変化等への対応が適切でない場合

[背景]
・売上は「AIアナリスト」並びにその関連サービスで構成される単一事業となっている
・DX市場の成長傾向は継続するものと見込んでいる
・当該市場の成長が鈍化するような場合、事業環境の変化等への対応が適切でない場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性がある

特定サービスへの依存

▶[リスク13]顧客のニーズと乖離した場合

[背景]
・売上高全体に占める「AIアナリスト」並びにその関連サービスを含むプロダクト事業の占める割合が2020年2月期に約9割と高くなっている
・販売を拡大させることによって当社の業績が向上する見通し
・同サービスに依存している
・ 収益源の多様性を持つことにより、より安定した体制の構築を目指すべく、サービスの拡大や、新たに当社の柱となる新規サービス、事業の開発に向け積極的に取り組んでいる
・顧客のニーズと乖離した場合は事業及び業績に影響を及ぼす可能性がある

LTV(顧客生涯価値)

▶[リスク14]施策の見誤りやトラブル等で特定期間の売上高または契約継続率が著しく低下した場合

[背景]
・顧客1社あたりの累積売上高であるLTV(顧客生涯価値)が重要と認識している
・新規サービスの投入および既存サービスの機能強化を通じて、アップセル・クロスセルによる特定期間における売上高の増大および契約継続率などを見ながら、LTV(顧客生涯価値)の維持・向上を図っていく
・何らかの施策の見誤りやトラブル等で特定期間の売上高または契約継続率が著しく低下した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性がある

プラットフォームビジネスにおける先行投資

▶[リスク15]想定どおりの採用・育成が進まない場合
▶[リスク16]マーケティングPR等活動の効果が得られない場合

[背景]
・「AIアナリスト」を中心としたプラットフォームビジネスは開発人員及び営業人員の採用、広告宣伝活動等の先行投資を必要とする事業
・結果として当社は創業以来営業損失を継続して計上している
・今後もより多くの顧客の獲得をめざし、開発や営業などにおける優秀な人材の採用・育成を計画的に行うとともに、知名度と信頼度の向上のための広報・プロモーション活動、顧客獲得のためのマーケティングコスト投下などを効果的に進め、売上高拡大及び収益性の向上に向けた取り組みを行っていく方針
・想定どおりの採用・育成が進まない場合、マーケティングPR等活動の効果が得られない場合等には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性がある

ストック・オプション行使による株式価値の希薄化

▶[リスク17]新株予約権について行使が行われた場合

[背景]
・役員、従業員、社外協力者等に対するインセンティブ等を目的としたストック・オプション制度を採用している
・今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討している
・現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、既存株主が保有する株式の価値が希薄化する可能性がある

情報管理体制

▶[リスク18]重要な情報資産が外部に漏洩するような場合

[背景]
・業務に関連して多数の顧客の情報資産を取り扱っている
・「情報セキュリティ管理規程」を制定し、アドミニストレーション統括部の管掌のもと、情報の秘密区分指定と区分ごとの保管方法等を定めるほか、役職員に対する情報セキュリティに関する定期的な教育研修を実施する等、情報管理体制の強化に努めている
・ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の国際規格であるISO27001の認証を取得している
・情報セキュリティ基本方針を策定するとともに、情報セキュリティ委員会を定期的に開催しISMSの適切な構築・運用についての審議を行っている
・何らかの理由により重要な情報資産が外部に漏洩するような場合には、当社の社会的信用の失墜、損害賠償責任の発生等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性がある

システム開発

▶[リスク19]利用者が損害を被った場合

[背景]
・システムに関わる投資・開発を継続的に行っている
・開発したサービスに不具合が生じた場合や、連携しているツールの仕様が大きく変わった場合、開発人員の獲得が進まないために開発が予定どおりに進まない場合など、利用者が損害を被った場合は、損害賠償の支払などにより、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性
がある

知的財産権

▶[リスク20]他社の知的財産権を侵害してしまう可能性

[背景]
・第三者の知的財産権侵害の可能性については、専門家と連携を取り調査可能な範囲で対応を行っている
・事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難
・当社が認識せずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できない

内部管理体制の強化

▶[リスク21]事業の拡大ペースに応じた内部管理体制の構築に遅れが生じた場合

[背景]
・今後の事業拡大に対応するため、内部管理体制をさらに強化する必要があると認識している
・人材採用及び育成を行うこと等により内部管理体制の強化を図っていく方針
・事業の拡大ペースに応じた内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性がある

コンプライアンス体制

▶[リスク22]事業運営に関して法令等に抵触する事態が発生した場合

[背景]
・今後企業価値を高めていくためにはコンプライアンス体制が有効に機能することが重要だと認識している
・「リスク・コンプライアンス管理規程」を制定し、当該規程に基づきリスク・コンプライ
アンス委員会を定期的に開催して全社的なコンプライアンスに関する事項の審議・検討を行うほか、定期的に社内研修を実施し、コンプライアンスに関する役職員の意識向上を図っている
・これらの取り組みにも関わらずコンプライアンス上のリスクを完全に解消することは困難
・今後の事業運営に関して法令等に抵触する事態が発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性がある

配当政策

▶[リスク23]配当実施の可能性及びその実施時期等については未定

[背景]
・株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識している
・現在は成長過程にあると考えている
・内部留保の充実を図り、収益基盤の多様化や収益力強化のための投資に充当することにより、更なる事業拡大を目指すことが株主に対する利益還元につながると考えている
・ 将来的には、各期の経営成績及び財政状態を勘案しながら株主に対して利益還元を実施していく方針
・現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定

新型コロナウイルス等の感染症の蔓延に関するリスク

▶[リスク24]感染症の蔓延が長期化または頻発した場合

[背景]
・新型コロナウイルス等の感染症の蔓延によるDXの重要性が増すことにより、中長期的には恩恵を享受する事業を展開している
・感染症の蔓延により、国内の経済活動の停滞に伴い、店舗の休業などを余儀なくされるなど事業に甚大な影響を受ける顧客が一部いる
・顧客の減少により、一時的に当社の成長スピードが鈍化する可能性がある
・「AIアナリストAD」については、企業のマーケティングコストの予算に係る影響を受ける
・景気の低迷に伴う予算削減当により、当社の成長スピードが鈍化する可能性がある
・新型コロナウイルス感染症の収束時期や新たな感染症の蔓延を正確に予測することは困難であり、感染症の蔓延が長期化または頻発した場合には、当社の事業への影響が長期化する可能性がある

ベンチャーキャピタル等の株式所有割合に伴うリスク

▶[リスク25]ベンチャーキャピタル等により株売却

[背景]
・発行済株式に対するベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタル等が組成した投資事業組合の所有割合は本書提出日現在41.2%
・ベンチャーキャピタル等の株式の所有目的は、上場後に所有株式の全部又は一部を売却してキャピタルゲインを得ること
・今後ベンチャーキャピタル等が所有する株式の全部又は一部が売却されることが想定される
・ベンチャーキャピタル等は、当社株式の上場時において、所有する当社株式の一部を売却
する予定

リスクサマリー一覧まとめ

[リスク1]市場の成長ペースが大きく鈍化した場合
[リスク2]同様のペースで順調に成長しない可能性
[リスク3]大手企業による新規参入等により市場シェアの構成が急激に変化した場合
[リスク4] DX市場の拡大に伴い市場に新規参入者が増えた場合
[リスク5]Google Inc.の事業戦略の転換並びに動向
[リスク6]インターネット関連事業を規制対象とした規制や解釈変更がなされた場合
[リスク7]技術革新に対応するためのシステム開発等の適切な対応に支障が生じた場合
[リスク8]対策を講じているにもかかわらず障害が発生した場合
[リスク9] 代表取締役社長大淵亮平と取締役インキュベーション本部長垣内勇威の業務執行が困難になった場合
[リスク10]新規事業の失敗によりコストのみが計上される可能性がある
「リスク12]事業環境の変化等への対応が適切でない場合
[リスク13]顧客のニーズと乖離した場合
[リスク14]施策の見誤りやトラブル等で特定期間の売上高または契約継続率が著しく低下した場合
[リスク15]想定どおりの採用・育成が進まない場合
[リスク16]マーケティングPR等活動の効果が得られない場合
[リスク17]新株予約権について行使が行われた場合
[リスク18]重要な情報資産が外部に漏洩するような場合
[リスク19]利用者が損害を被った場合
[リスク20]他社の知的財産権を侵害してしまう可能性
[リスク21]事業の拡大ペースに応じた内部管理体制の構築に遅れが生じた場合
[リスク22]事業運営に関して法令等に抵触する事態が発生した場合
[リスク23]配当実施の可能性及びその実施時期等については未定
[リスク24]感染症の蔓延が長期化または頻発した場合
[リスク25]ベンチャーキャピタル等により株売却

全体的な所感

典型的なSaaSモデルのサービスで、「掘る」ことでマーケットを拡大させていく想定で事業展開をさせている。いかに効率的かつ効果的にユーザーやビジネスアカウントを獲得していくかがポイント。その基幹となるマーケティングや市場動向がリスクというところでしょうか。

まとめ

2021年2月に開示された『新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)』を参考にWACULの事業・経営リスクをまとめました。

株式投資の判断だけでなく、就職活動や企業分析の参考にしてもらえればと思います。また新しい情報が開示されれば更新していきます。

タイトルとURLをコピーしました